Cat’s purr

トリアタマ用メモブログ

「ショーシャンクの空に−刑務所のリタ・ヘイワース」

*ネタバレあり


最近ようやくDVDを手に入れて、何度目になるのかは忘れたけど、何度見てもその度に大好きだと強く思う。自分の好きな映画はどれもこれも順位をつけがたい。だけど確実にこの「ショーシャンクの空に」は、特別な作品だと思う。


この映画を何度か見たあと、スティーブン・キングの原作「刑務所のリタ・ヘイワース」(ゴールデンボーイに収録)も読んでみた。
この本を貸してくれた父は、原作よりも映画がおもしろいと言っていたけど、読み終わってみると、小説でこの作品を改めて知ることができてとても良かったと思う。
確かに、原作は短編なのであっさりとしか語られていないが、映画にはオリジナルのシーンもたくさんあってストーリーに厚みがある。それに、原作では例の凶悪な所長にアンディは仕返しすることなく去ってしまうのだ。その辺りが、映画のほうが見ごたえがあって胸がスッとするかもしれない。


刑務所のリタ・ヘイワース」は、レッドの口調が親しみ深い、一人称の文章で語られている。しかもこの作品は、レッドが一人、アンディの去ったショーシャンクで、誰にも見つからないように消灯後の暗い監房の中、何日もかけて書き綴っている手記なのだ。
レッド視点なのは映画も同じだけど、映画を見た後、レッドの書いた告白のような手記を読んでいるのかと思うと、それだけでなにか感激してしまう。
「これはぜんぶおれのことさ、一語一語が。アンディこそ、やつらがどうしても閉じこめられなかったおれの一部だ」
そう語ったレッドの気持ちが、なんだかすごく嬉しくて、泣けてきた。


レッドはアンディを「自由人」と呼ぶ。「自由の見えないマント」をかぶっているようだという彼の表現は、アンディという人を想像するのにぴったりの形容だと思う。
そして、仮釈放になったレッドも、自分を自由人と呼んでアンディの元へ旅立っていく。「必死に生きる」ために。
「この気持ちは自由人にしかきっとわからない」と言う彼の、これからの生き方を誇りに思うような言葉がかわいくて、そのシーンは何回見ても笑顔になってしまう。


I hope I can make it across the border.
「無事国境を越えられるといいが」
I hope to see my friend and shake his hand.
「親友に会って握手ができるといいが」
I hope the pacific is as blue as it has been in my dreams.
「太平洋が夢で見たように青いといいが」
I hope.
「それが俺の希望だ」


という、レッドの独白でストーリーは幕を閉じる。原作を読んで初めて分かったことだけど、この手記の最後を、レッドはアンディがいるはずの町へ向かう途中の安宿で、胸を高ぶらせながら震える手で必死に鉛筆を握って書いているのだ。
だから私たちはその濃いブルーの「記憶のない海」を、読み終わった後で想像することしかできない。
なんてにくいラストなんだろうと思った。映画では、目前に南の海の明るい色が広がって、レッドに気づいたアンディが歩み寄るシーンでエンドロールが流れる。
ショーシャンクでは見たこともないとびっきりの笑顔で。
そのとき、沸々と込み上げてくるような感動が、いつも涙になってこぼれ落ちる。なんて嬉しいラストシーンなんだろうと、飽きもせず感動する。


映画というのは視聴者に映像で訴えてくるエンターテインメントだ。
でも、そのシーンを想像するしかない原作を読んでいるときも、きっとレッドはアンディに会えるはずだという確信があった。
それが彼らのささやかな希望で、生きるために必要なもので、暖かい土地で再会した二人が穏やかな時をこれから刻んでいくのが、ゆっくりと脳裏に思い浮かんだ。


この話は、「恐怖の四季」シリーズの、「春は希望の泉」という副題の小編なんだけど、まさしくテーマは「希望」なんだと思う。
確かに「恐怖」が根底のテーマではある。不運というのは時に、これ以上ないほど偶然重なってしまうということ、権力を持つ人間の横暴、弱者の不条理。そんなことが本当にそら恐ろしく描かれていると思う。でも、そんな恐怖の中でわずかな希望を失わないでいることのできる強さ、それを伝えたかったのではないかと感じた。


「必死に生きるか、必死に死ぬか」という、アンディの手紙を読んだあとのレッドのセリフは、ふと自分にも置き換えて人生観を考えさせられる。
塀の中でアンディに対して“Hope is a dangerous thing.”「希望は危険だぞ」と忠告していたレッドが、ラストでは“hope”を4回も繰り返しているのが印象的だ。
「レッド、希望はたぶんなによりもいいものだ」と言うアンディに、レッドは深い感銘を受けたのだろうと思う。




どうも中学生の読書感想文みたいになるなぁ。(笑)
思い入れはひとしおなのに、残念。
少し落ち込んだ気分のとき、優しい気持ちになりたいとき、ふと見たくなる映画だ。


*蛇足
上山競馬場には“ショーシャンク”という牝馬がいるらしい。馬主さんは映画ファンなのかな。なんだか嬉しい。(笑)


このイラストが好きすぎてポスターも買った。
予想よりバカでかかったけどちゃんと飾ってる。