Cat’s purr

トリアタマ用メモブログ

「COLDシリーズ/木原音瀬」

↓ネタバレ注意


以前、ウォーキングダイエット中によくiPodでドラマCD(主にBL)を聞いていた。カーステレオがUSB対応になったので、最近は車でも聞くようになった。
変なシーン?の所はボリュームを絞らなければならないが、買ったまま聞いていなかったCDがたくさんあるので、ぼちぼち消化するようにしている。

その積みCDの中でもディスクが全部で7枚の大作がある。木原音瀬原作のCOLDシリーズだ。
最後の巻の発売は2010年。もう4年も寝かせてる。
この作品は7枚一気に聞いてしまうだろうと思ったから、なかなか手をつけられなかった。二人の関係がどう行き着くのか、最後が気になってしかたがない作品だから。
それよりもこの話、心して聞かなければならないくらい、とても内容が辛い。
私がどうしても駄目な展開は、主要登場人物が死んじゃうことだ。この話では厳密には死んだりしない。でも、死ぬのと同じくらいのことが起こってしまう。


ネタバレすると、事故で記憶障害になった透は自分の過去をすべて忘れ、後見人になった藤島をいつしか愛するようになる。ケーキ屋のバイトからパティシエを目指すようになって、パリへ留学することになった直前、昔の記憶が蘇るが、記憶障害だった間の記憶は一切なくなり、藤島を憎んでいた頃の透へと戻ってしまう。
6年間の記憶がないことで不安定になった透は荒れて、藤島に暴力をふるうようになっていく…。


やっぱり途中でやめられなくて、朝の4時までかかって一気に聞いた。聞き終わったときのやるせなさは、原作を読んだときと同じだった。
藤島が大好きでケーキ職人だった透は消えてしまった。それがとても悲しい。

以前見たドラマかなにかで、多重人格の人が治療薬で人格を統合するという話があった。統合されると消えてしまう人格は、死にたくないと激しく抵抗する。
元人格は当然自分が残るだろうと無理やりクスリを飲む。すると元人格が消え、凶暴な別の人格だけが残った…っていうあれ、なんの話だったかな。

厳密には透は死んだ訳じゃない。でも、藤島を愛していた6年間の透はもうどこにもいないし、おそらく二度と現れない。
この場合、昔の透と記憶のない透は、まったく別の人格だ。藤島と愛し合った透は死んでしまったのと同じだ。

ある日透は、藤島と抱き合って、明日の予定を考えながら、眠りについた。そしたら翌朝、透の意識は消えてなくなってしまった。
藤島にも二度と会えない。恐ろしいなと思う。
フィクションだけど、こんな風に人間の意識が消えることで死んでしまうことがあるなんて。

藤島は6年の記憶をなくした透のそばに居続ける。とても優しい、希望のあふれたラストだと思う。あーだけど、読後感はやっぱりひどく悲しいのだ。
木原音瀬作品恐るべし。痛みの女王だけあって、凄い作家さんだ…。


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各2枚組。3作品購入特典の番外編を収録したドラマCDと合わせてディスク7枚。特典CDにはFEVERのその後の「四季」と、野島裕史さんと羽多野渉さんのキャストトークが収録されてる。できればこの話も通して聞くと、悲しい気持ちがいくらか救われる。